南蛮 唐 紅毛 キリシタン 蘭学

 





受賞推薦理由(『科学史研究』第47巻(No.247)、2008年、179頁)。


<受賞対象者>
平岡隆二(所属:長崎歴史文化博物館主任研究員)

<推薦理由>
 平岡氏は、第一に西洋宇宙論の日本への伝道に重要な役割を果たした沢野忠庵(Christovao Ferreira, 1580頃-1650)の訳出書『乾坤弁説』の諸写本17種の所在とその内容を確かめ得た。これは従来京大文学研究科図書館蔵の写本(京大文図本)のみによっていたテクストを校訂して今後そのcritical editionをつくる上での重要な基礎作業として評価される。(平岡隆二「『乾坤弁説』の諸写本の研究」『長崎歴史文化博物館紀要』(創刊号2006年)

 第二に、これまで素性の分からなかった諫早市立図書館所蔵の『天文方書留』の内容を詳しく検討し、それが一方において南蛮系天文書『二儀略説』によると同時に本木良永の手になる蘭学系天文書『日月圭和解』をも利用していることを明らかにし、本書が天明期以後の時代に、おそらく長崎において成立した南蛮系と蘭学系を混在させたユニークな書き抜き書であるという興味深い事実を示した。その分析手法は的確である。(「写本『天文方書留』に見る南蛮・蘭学系天文学の混在」『科学史研究』46(2007))

 第三に平岡氏は、南蛮天文学の日本への伝達において最も重要なソースとなったペドロ・ゴメス(Pedro Gomez, 1533-1600)のラテン語テクスト『天球論』を、残存している唯一の写本に基づいて、その第一部を校訂し、さらにそれに初めての英訳を与えて出版した。このラテンテクストはすでに上智大の尾原悟氏により発表されていたが、(『キリシタン研究』第10輯、1965年)、さらにそれを正確に読み直し、critical apparatusを付け加えて再校訂したものである。推薦者はこの業績を最も高く評価する。なぜならこれから南蛮天文学の系譜を明らかにしようとするとき、誰もがこのテクストを基盤としなければならないからである。(“Jesuit Cosmological Textbook in ‘the Christian Century’ Japan: De Sphaera of Pedro Gomez”(Part 1)Sciamvs 6 (2005))

 以上のように平岡氏は、近世日本に伝えられた西洋の宇宙論、天文学知識の源泉を明らかにすべく、原史料にあたり、堅実で正確な書誌学的文献批判的方法を駆使して、数々の業績をあげ、今後その独自な研究がさらに発展することが大いに期待される。よってここに日本科学史学会・学術奨励賞の受賞者として、平岡隆二氏を推薦するものである。

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